もう一つ、重要なことがあります。
店舗を建物からつくる場合、ひとつのプロジェクトの中に、建築工事と店舗内装工事が入ることになります。
建築会社が工事を元請として請け負う場合、その後で、店舗内装については好きな店舗内装会社に頼みたい、と思っても、まず実現するのは難しいです。
それは、建築工事に内装工事が含まれる、という社会的な認識によるものです。
多くの場合、店舗内装会社が下請として計画や工事に入ることになり、店舗内装工事について、建築会社にマージンが発生してしまうからです。それでは、全体のコストが高くなってしまうため、予算に合わなくなります。
銀行から融資を受けて進めるプロジェクトなら尚更です。融資額が決まってから、肝心の店舗デザイン部分の質を上げることを検討するのはほとんど不可能です。
結果として、建築会社がそのまま店舗の設計・施工も担当するか、建築会社と関係の深い内装会社が設計・施工を担当することになります。それでは、よい店舗空間が実現されにくい。
しかし、店舗内装会社が工事の主導権を握る場合はどうでしょう?
店舗内装会社が、店舗空間から建築全体の基本構想を起こし、クライアントに了承を得て、それをつくるにふさわしい建築会社を探します。
建築会社は、基本構想をもとに、自らの得意な部分を生かした設計を行い、建築工事を担当する。
店舗内装工事に建築工事は明らかに含まれないので、建築工事と店舗内装工事は必ず別注になります。
その結果、クライアントにとって、理想的な店舗空間が実現されながら、両者の間にマージンが発生しないため、全体のコストも安くなる可能性が高くなります。
(つづく)