空間をつくる、という仕事をしていると、自分の理性を消し去りたい瞬間がある。
まるで草原を風が吹くように空中に曲線を散らしたいと思う瞬間。まるで屋根を雨が叩くように床に模様を描きたいと思う瞬間。・・・
自分が自然そのものになりたいと欲するとき、理性は必要ない。必要とされるのは、感性である。
私は、理性のみによってすぐれた空間をつくることはできないと考えている。
効率を追う社会では、理性の力を能力と呼んできただろう。
だが、現在、資本主義社会が崩れようとしている、という人がいる。
もし、そうなら、感性の時代がやってくるだろう。
そのときに、能力主義は今とは別の価値観にシフトするだろうか。それとも、それ自体が消滅するだろうか。