2005年、ガス・ヴァン・サント監督。
ニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンの死に着想を得て、急激に富と名声を得たロックバンドのボーカリストが自殺に至るラストの2日を描いた作品。
ぶつぶつと何かを呟きながら、森を彷徨う冒頭のシーンは、まるで野生動物のようである。川へ入り、放尿するシーンが唯一彼の生命を輝かせている。
彼は、純粋を求めて自然へ回帰しようとする。だが、狩りをできない彼は、食うために家へ帰らねばならない。森の中を、最新の高速列車が走る。
「どこで間違えてしまったのか?」
ぐずぐずしているうちに、生きているという感覚はどんどん薄れていく。
はっきりしているのは、誰も彼を救うことができない、ということだ。
観客は、彼の陥った淵の深さを知り、ただ見ているしかない。
そして、闘うことを止めたとき、恍惚の表情とともに彼はこの世を出ていく。
生きるとは、闘い続けることだ。