gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2012.6

映画 ラスト・デイズ

2005年、ガス・ヴァン・サント監督。ニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンの死に着想を得て、急激に富と名声を得たロックバンドのボーカリストが自殺に至るラストの2日を描いた作品。ぶつぶつと何かを呟きながら、森を彷徨う冒頭のシーンは、まる…

能力主義の行方

空間をつくる、という仕事をしていると、自分の理性を消し去りたい瞬間がある。まるで草原を風が吹くように空中に曲線を散らしたいと思う瞬間。まるで屋根を雨が叩くように床に模様を描きたいと思う瞬間。・・・自分が自然そのものになりたいと欲するとき、理性…

近頃、気になっていること

「近頃、気になっていること」を、週に一度の会社の定例会で、二人ずつ発表している。勉強会とか、STUDIOとか、呼ぶとプレッシャーになるから、この名前にしよう、という話になった。中身は同じでも、名前によって、気が重くなったり、楽になったりす…

公私混同

公的な場と私的な場をはっきりと分けるようになるのは、一般にいつからだろう?2歳の息子・陽向はどちらも同じで当然だが、実は私も妻も公私の境があまりなかったりする。一般に、学生時代までは、公私の境はあいまいな人が多いと思う。(大学の研究室でど…

成功した大人たち

会社を立ち上げてまだ間もない頃、神宮前のアースデイのイベントの会場設営に誘われて、ボランティアで参加した。グリッドフレームがいろんな人の目に触れることを目論んだのだ。会場設営には、たくさんのクリエイターが集まった。ほとんどがボランティアだ…

フクシア

わが家の北向きのベランダは、4月に買ってきた花をことごとく枯らしてしまったが、最近一つだけが復活して、いくつも花をつけている。フクシアという名前の花だ。英語ではフューシャという。フューシャピンクと呼ばれる色の方がむしろ知られているかもしれ…

この土地は何を考えているか

石田博さんというアーティストを紹介されて、個展の最終日に訪れた。案内文には、「この土地は何を考えているか。自然科学するように大切に描く。」と書いてある。この言葉が、磁石のように私を惹きつけた。見ることと描くことが等価にならなければ、このよ…

映画 パラノイド・パーク

2007年。ガス・ヴァン・サント監督。青い吊橋の風景のショットで始まる。美しい、けれど、少なくとも私にはどこなのか特定できない風景。アメリカの郊外の町が舞台だ。地震のない国の吊橋はスレンダーで美しい。逆に言えば、日本から見れば、橋脚などが…

モノローグ 2

昨日、書くことは道を決めていない散歩に似ている、と書いた。散歩は、最後には家に帰ってくる。書くことも最後は自分という家に帰ってくる。書いているときは、ずんずん進んでいくが、実は家の周囲からそんなには離れていなかったりする。家へ帰れなくなる…

モノローグ 1

書くことの楽しみは、道を決めていない散歩の楽しみに似ている。なんとなく今考えていることをとにかく書き始め、書くことによってできる文脈が導く分かれ道で、どちらへ行こうかと迷う。そこで選んだ道は、確信を持って選んだ場合もあるし、棒を倒して選ん…

台風明けの朝

質量を持った雲が長く、くっきりとクジラのように浮かんでいる。こんな朝でなければこの雲にはお目にかかれない。 ← グリッドフレームのHPはこちらです

きゃりーぱみゅぱみゅ

「きゃりーぱみゅぱみゅ」と発音すれば、まず100%噛んでしまうことが分かっているので、いつも「きゃりーなんとか」と言ってごまかさざるをえない。これまで、こんな悪意を感じる名前のアイドルはいなかっただろう。といっても、すぐに憶えてしまうから…

ショック

もう寝せようと部屋を暗くした後も、眠れないのか、暗闇の中で机のPCに向かっている私に近寄ってきた陽向。手には、この3週間くらい毎日遊んでいた青い風船。今日になって大分しぼんできている。私の横で風船で遊んでいるうちに、パンと低い音をたてて風…

GF就業規則 前文

「株式会社グリッドフレーム(以下「会社」という)は、社員全員をあたかも独立した事業主のように見なす。なぜなら、会社は、独自の感性・情熱・技術を持った複数の個人が、「よりよい空間をつくる」という唯一の共通目標のために集う、空間アーティスト集団…

第一印象

親しい友人との会話の中で、友人がこんなことを話してくれた。「ある人事担当の知人の話で、履歴書の写真が面接で会った本人の姿よりも印象がよい場合は、その人は自分をよりよく見せようという意識が強いわけだから、採用後に期待を裏切られる可能性が高い…

club OWL 

新宿のクラブOWLがオープンした。今回検討を重ねてつくった鉄の亀裂から漏れ出るライティング。注がれたエネルギーは裏切らない。 ← グリッドフレームのHPはこちらです

キナバル山

ボルネオ島のマレーシア・サバ州にあるキナバル山に登ったことがある。山頂付近は、溶岩が固まってできているそうだが、色のない不思議な世界が広がっている。写真のようなシャープなかたちが印象的で、金属を思い出させる。山麓は生命に溢れるジャングルな…

アスファルトの青

小学校1年生のときに、踏切の絵を描いたのを憶えている。そのとき、私はアスファルトを青のクレヨンで塗った。アスファルトは灰色だと言われたが、私は青いと感じていた。なぜなのか、わからない。けれど、それが子供のときにだけ持っていた感覚であったの…

過激

たぶん誰の人生にも過激を好む時期がある。多くは10代でその時期を経験するだろう。実は内容なんてなんでもよく、過激であることこそが価値だったりするため、落ち着いてしまった大人には手をつけられなかったりする。過剰なエネルギーがはけ口を求めてい…

木影のモザイク

朝、思わず立ち止まってしまった。フロスト加工されたガラスブロックの外には、光を浴びた木々が風に揺れている。さまざまな明度の緑と白のモザイクが変化する様子は、まるで大きなモニターのようでもある。自然のような人工ではなく、人工のような自然とい…

同じ方向を向くこと

例えば、店舗をつくる仕事と、住宅をつくる仕事を比較したときに、何が一番違うか?それは、住宅はクライアントである住人のための空間であり、店舗はクライアントとは別のカスタマーのための空間であることだ。よって、住宅をつくる仕事は、原則としてクラ…

Ballon Dessai

(久保寺オーナー撮影、拝借しています)下北沢にカフェラテ&ギャラリーのお店がOPENした。入口はまだ制作中で今月中に完成する。観測気球という意味の店名から、カメラのついたドアが円弧を描いて移動する仕組みのキッチンスペースを構想した。バロンデ…

Rose Room

表参道のレストランBAMBOOの一角に、Rose Roomが完成した。エチオピアのバラをいろいろな見せ方で紹介するための部屋である。今回は、空間のみならず、新しい植物との付き合い方を提案している。*****************************…

映画 ディボース・ショウ

2003年。コーエン兄弟監督。金目当てに結婚をして、離婚により大金持ちになる女性。こんな女性は、結婚をビジネスと呼ぶのだろう。需要があるのなら、べつに文句はない。金なのか、愛なのか、という問題は誰にも避けることができない。ほぼ全ての人が、…

イルカ

過去の船旅で、イルカの群れが船に寄ってきたことが数回ある。いずれも乗客は甲板に出て、はしゃいでいたのを思い出す。イルカは、乗客に向かってサービスするかのように高く跳ねた。歓声が上がった。イルカほど人なつっこい野生動物は他にいないだろう。動…

ホタルノヒカリ

今年も蛍の季節がやってきた。暗闇にほのかな光がいくつも点滅しながら浮遊する。その原初的な光景は、生命の誕生を想起させる。その光が、汚れのない水の中でしか育つことができないという自然の仕組み。年に一度、「純粋」という言葉に触れるために、人は…

OWL

新宿二丁目。雑多な街の地下に、クラブOWLが完成した。鉄の重さ、光沢、やわらかさ。LEDの冷たさ。キャストガラスの深さ。結果として得られた空間はこんなふうに表現されるだろう。 鉄に関していえば、全く逆の結果を導くこともできる。それが鉄を使う…

今ここ

20世紀後半の実存主義は、「今ここ」を大切にする、という思想だったろう。それゆえ、未来を大切にする、ということがないがしろにされ、環境破壊が無反省に進められた、という実態があるだろう。そして、環境問題が深刻になり、21世紀に入ってからは、…

映画 バートン・フィンク

1991年。コーエン兄弟監督。現実と幻想の境をゆらゆらと行き来するロサンジェルスのホテルの中。古いホテルにはそのような薄気味悪さがある。その薄気味悪さは、ドアが等間隔にならぶ長い廊下に凝縮される。一体、自分と同じ間取りの部屋にどんな人間が…

モンゴルの馬

地平線に360度囲まれた草原。その中心で太陽の方向を見ながら、ひたすら自転車を漕ぐ。東へ。東へ。2日後には町にたどり着くだろう。 東の地平線の一点に、黒い点が現れる。点が少しずつ大きくなってくる。なんだろう?ドドドドドドドド・・・、大地の声が…