父はひとりでふらりと出掛けて行っては、数時間後に焼き鳥やら饅頭やらを買って帰ってきた。
たぶん遊んだ後で突然家族の顔を思い浮かべては、持ち合わせのお金でできることをする、という、父特有の愛情表現だったと思う。言ってみれば、その場の思い付きである。
計画的にそんなことをするのは、あまり得意ではなかったはずだ。というのは、私にもそんな行動パターンがあるからである。
血のつながりとは不思議なもので、不意に自分の中に父の影を見つけることばかりだ。
そのときに母が喜んでみせたように、妻も喜んでみせてくれる。