建築を学んだ人は、モノトーンを好む人が多い。
理詰めで設計していくにあたって、色の理由づけが困難だからであろう。
映画「ユリイカ」では、失語症になった少女が言葉を取り戻したラストシーンで、それまでモノクロだった画面がカラーに変わる。色は生の象徴として用いられている。彼女の人生を取り戻した、という意味では、一般性から固有性への変化を表しているとも言える。
この固有性を簡単に与えるわけにはいかない、というのも、建築がモノトーンになる理由のひとつだろう。建築を学んだ人はニュートラルな空間をつくりたいのだ。
店舗空間は、建築の一部分につくられる。看板が出されるわけだから、まさに固有性が前面に出てくる場合が多い。だから、色が使われることが多い。
しかし、私は建築を学んだ人として、やはり色についてはストイックだ。色を使ったとしても、彩度を下げる傾向がある。
一般性が重要だと思っているわけではない。むしろ、固有性が重要だからこそ、簡単に色を配してはならない、と思うからだ。