gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

ジョン・アーチア教授

ニューヨーク州立大学へ入学したとき、いちばん最初に出会った建築学科の教授がジョン・アーチア(John Archea)教授だった。

彼は心理学が専門の先生だったが、日本の歴史などの学問的知識も、私よりも遥かに豊富だった。

最初のプロジェクトはシェークスピアの「リチャード3世」からひとりの登場人物を選び、その人物のための墓を設計するというプロジェクトだった。

私は悪人リチャード3世に操られる腹心バッキンガム公を選んだ。自分の人生を生きられなかった彼に、輪廻転生のための装置をつくった。

骨を収納するひょうたん型のガラス容器に、魂を再生させるための球状のガラス容器。アーチア教授は、魂を収納する容器がより完全なかたちをしていることにとても興味を持ち、こう言ってくれた。

「君たち日本人は、魂は本来美しいものだと信じる力の強い文化を持っている」

アーチア教授が好きな映画は、黒澤明の「いきる」だ、と教えてくれた。この教授の下で、私は無言のうちに生きる姿勢を学んだと思う。

大学院の3年目に、アーチア教授は急病で亡くなった。転生する必要がないくらいに、自分の人生を生きた一生だったのではないか、と想像する。

グリッドフレームのHPへ ← グリッドフレームのHPはこちらです

人気ブログランキングへ ← ランキングに参加しています クリックありがとうございます