gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

蛍を見に行った。

ここ数年、この時期には必ず蛍を見に行く。

昨年は、妻のお腹の中の生命の鼓動と蛍の点滅が重なって見えた。ずいぶん繊細で儚いものに思えて、その点滅が消えないことを心から祈った。

今年は、そのときの繊細で、ともすれば消えてしまいそうだった鼓動は、蛍を見る側へと成長した。ときおり、「あ〜」というかすかな声を上げては、手足をばたばた動かす。

暗闇を背景として、かすかに小さな光が点滅すると、光が光を呼んで、10個くらいの光が交差する。静寂の中で、ゆっくり、ゆっくりと。

これほど暗闇を親しく感じるときは他にないだろう。小雨まじりの曇り空は、月を覆い隠して、例年にも増して、暗闇は純度を高めて私たち3人を包み込み、私たちは互いの存在を視覚とは別のもので確認しあっていた。