gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 誰も知らない

是枝監督。

母親に置き去りにされた4人の異父兄弟、明、京子、茂、ユキ。4人は、母親が残したわずかな金でなんとか懸命に生きていこうとする。

学校に行くことも許されず、長男の明以外は、部屋の外へ出ることすら許されていない。だが、時が経ち、金はほとんど尽きてしまう。電気が止められ、水道が止められ、笑いのある生活は少しずつ失われ、悲惨な生活へと移り変わっていく。

そんな中、末の妹ユキが椅子から落ちて意識を失くし、誰も何も手を施すことができないうちに、命を落としてしまう。

死んだ幼い妹をスーツケースに詰め込んで、彼女が行きたいと言った飛行機の見える場所に彼女を埋めに出かける長兄。帰りに、泥だらけの服で電車に乗る。

幼い妹を失くしても、兄弟は泣かない。心が冷たいのではない。彼らのどの命も、ろうそくの炎のように、ひと吹きで消えてしまうくらい心もとないのだ。

死は、彼らのすぐ横にある親しい存在であり、そこに感傷が入り込む隙間は1ミリもない。

究極の生活の中に、愛おしい命が揺れる。