柳田邦夫が実子を11日間の脳死状態を経て亡くしたときのことを語る番組を観た。
それまで科学的事実を追う仕事を徹底してきた柳田が、魂について想いを馳せる仕事に転化したきっかけとなったと語る。
「科学はぼんやりとしたものを消し去ってしまう」
自ら命を絶とうとした末の脳死状態の息子の前で、魂の対話を続ける柳田の苦悩。柳田が病室に入ってくると血圧が上がるという息子もまた柳田と向き合うことに何かを感じていたに違いない。
息子の死後、生活を取り戻すのにかけた時間の中で、柳田が貧しい家庭を一人で支えてくれた母親の愛に辿り着く。困難の中で常に楽観を貫いた母と比べて、自分がその何十分の一を息子に与えることができたか?
柳田は「失敗だった」と語る。のっぴきならない人生を送っていることを自覚しながらも、そう語らざるをえない彼の後悔に、ぼくは学びたい。