スポーツの見所の一つは、試合中の選手の表情である。
冬季オリンピックでは、ヘルメットやゴーグルをしていてよく見えない競技もあるが、例えば、投げるときの真剣な表情が魅力的だからこそ、トリノ五輪からカーリングが人気競技になったのだと思う。
なかでも表情が大切なのは、フィギュアスケートである。例えば、ジャンプの直前の表情。男子は気合の入った顔をしても絵になるかもしれないが、女子にはやはり涼しげに美しくジャンプしてほしいという願望がある。そういう意味で徹底しているのが、金妍児である。いつもクールで、しなやかで、文句のつけようがない。元々、金妍児の顔は踊るのに向いている。それは、写真を見るとよく分かる。金妍児の写真の表情はいつも淡々としているが、浅田真央や安藤美姫はこわばった顔で写っていることが多い。
もともと浅田真央は、ニコニコしながら滑っている姿が魅力的だったが、最近はラフマニノフの｢鐘」など、荘厳な曲で演技するようになって、彼女の元々持っていたものとは違う表情を出さなければならなくなった。
スランプを経て、立ち直ったといわれる内容は、トリプルアクセルが成功するようになったことだと言われるが、私は表情に注目したいと思う。
｢鐘｣をバックに踊るにふさわしい表情か。
