gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2017.4

燕子花

かきつばた、と読む。花菖蒲やアヤメとの差異がわからなかったけれど、根津美術館で展示中の尾形光琳の屏風絵とそこの池に咲く燕子花を見て、ネットで調べて自分も見分けることができるようになった。便利な時代だ。けれど、これほどに似ている花を別名にす…

老舗

家族の記念日を老舗の小さなお店で祝う。よい仕事とは、どういう仕事なのか、ということをシンプルに感じたいならば、そんな場所が最適かもしれない。家族に対する今までの感謝と未来のかたちについて、ゆっくりと語り合う。いや、語り合うことなく、共に思…

アイディア

アイディアは突然降ってくる。寝ているときも含めて、あらゆる瞬間にその可能性がある。それまで長い時間考え続けた後であることもあるし、クライアントにお話を伺った瞬間に降ってくることもある。それを捕まえることに失敗すると、またゼロに戻ってしまう…

幸福の基準

ぼくが思う幸福の基準は、自分を突き動かす好奇心に対して、どれだけ自由にそれを探求できるか、にある。まずは、自分を突き動かす好奇心があるかどうか、で、全人口の中ですでに20%くらいに絞られてしまうのかもしれない。この数字は、出会う人からそれ…

ずっと描いていた風景

柄谷行人は「日本近代文学の起源」の中で、風景とは近代文学によって発明されたものだ、という。風景は昔からそこにあったのだけれど、風景として見られることはなかった、と。風景として見るとは、例えばそれが人物であったとすれば、こちらが勝手に自分の…

日本から海外への贈り物

日本から海外へ配信したい、店舗デザイン・建築・プロダクト・モノはありますか? という問いに答えて・・・元来、日本独自の文化は、氷河期から温暖な気候への変化とともに現れた、豊かな森林での生活に始まっていると思われます。縄文時代と呼ばれる、一万…

続けること

関園子さんの写真展の季節が今年もやってきた。今年で13回目になる。日頃、歩いているときに、心が動いたものへ瞬間的にシャッターを切る。それを、現像したものを見て、ギャラリーにどのように並べるかを時間をかけて考える。ギャラリーで展示すること自体…

小網代の森

黒澤明の遺作「夢」の中にこんな風景があったような気がする。夢を見ていたのかもしれない。そんなふうに思い出される風景。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフレーム ← コラボで実験しながらつくるオリジナル素材による店舗デザイン:マテリ…

二つの約束

自然の中で、生死を賭けた生活の中にいると、人間の潜在的な能力が覚醒されるのだろうか。戦後30年間、フィリピンのルバング島で、終戦を信じることなく戦い続けた小野田寛郎さんの話だ。彼は、軍警察との銃撃戦の中で、敵の撃った弾が見えて、よけることが…

日本の空間

今そこにあるものに可能性を求めて、つくらない、ということに尽力する。そうして、つくるものを極限まで減らして、つくるものには心置きなく手をかける。突き詰めていけば、まったくつくらない、という答えにたどり着いてしまうだろう。ただ、そのままの自…

掃き溜めに鶴

「掃き溜めに鶴」という言葉はあまり好きになれない。もっと美しい日本語が生まれる必要がある。別の世界のものが、ポツンとある風景。それを見つけたときの興奮。それは、見つけたぼく自身に新しい世界を開いてくれる。それ以上に大きな価値があるだろうか…

ビルが要求するかたち

現存するものが要求してくるかたちにしたがう。ぼくは、それを必須だと思うけれど、気にかけない人が多いことを不思議に思う。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフレーム ← コラボで実験しながらつくるオリジナル素材による店舗デザイン:マテ…

一対一で向き合う

一対一で向き合うことの先には、私たちが失ってしまったかもしれない力を取り戻せるかもしれない、という予感がある。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフレーム ← コラボで実験しながらつくるオリジナル素材による店舗デザイン:マテリアルス…

達人

友人に塩田剛三という人を教えられた。合気道の達人だ。youtubeで彼の姿を見て、あらためて思うのは、彼には恐怖心がない、ということだ。ぼくは車で事故に遭いそうになったときに、周囲がスローモーションで動き始めた経験が二度あるが、そのときに不思議と…

壊れた街

途方もない時間が経過するか、大災害でもない限り街が壊れることはないけれど、ぼくらの仕事の中では、一つの店舗から他の店舗をつくるたびに、一つの秩序を持っていた空間が壊された状態を見ることになる。それは、さながら壊れた街だ。その状態は無意味な…

雨の降る部屋

雨の音がするわけでもないけれど、部屋には雨が降っている。濡れた床に、街灯が映り込んで、長い鉛直のラインが揺らいでいる。誰かが、本を読んでいる。ときおり顔をあげては、ぼんやりと考えごとをしている。どうせ雨なのだからね。 ← 創造性の連鎖でつくる…

ねえ、パパ

「ねえ、パパ・・・ぼくもいつか死んじゃうの?」「そう、ずっと先にね。パパやママがずっと先に死んじゃった後のまた、ずっと先にね。」陽向は「ムゲン」という言葉を覚えてから、きっとその意味を知ろうとしている。空間と時間の無限。ぼくが子供のころも、夜…

取り残されて

なんとなく「取り残されて」というタイトルだけを書いたら、自然に昔、聴いたことのあるうたが胸の中に流れてきた。 さびしさに さびしさに なれて なれてあなたに あなたに なじむ なじむ このうたをうたっていた女性の声はだれか?としばらく考えた。えっ…

桜の川

桜の頃は、雨が多い。今年は特にそう感じる。けれど、気温が高くないからか、桜は雨に散ることなく、まだ見頃は続いている。雨が降ると、歩道の上にそのときだけの小川ができる。その流れが坂の上から桜の花びらを運んできて、桜の川ができる。桜の川をさか…

写真

例えば、ある場所の写真を見る。それに魅かれて、その場所へ行く。写真を見る行為は、フレーミングされたその場所を外部から見ることだ。その場所へ行くことは、フレームの中に入り込むことで、内部から見ようとすることだ。そうやって、内部と外部はつなが…

鳥ではなく、リスのように

アメリカの大学のキャンパスにはたくさんの栗の木があって、また、それを食べて生きるリスがたくさんいた。足元には、リスたちの身長くらいの少し背の高い芝生があって、秋には、彼らが栗の実を探し回る様子をぼくは愉しげに眺めていたものだ。あっちを走っ…

島唄

天草の島を巡りながら、島原の乱で、こんな美しい島で数万人が亡くなる殺し合いがあったことを考えていたら、たまたま「島唄」について語る宮沢和史さんのインタビュー記事に行き着いた。天草の話ではないが、彼は沖縄を訪れ、その美しい自然に感動した後、…

ベースを固める

つくる、という行為には、なにかしっかりとした土台を必要とする。だから、仕事はまず、その土台を固めることから始める。そうこうしているうちに、一日が終わってしまい、今日もつくることに時間を費やすことができなかった、という日がある。ぼくがつくる…

一日の重さ

一日の終わりに、今日の重さをどれだけしっかりと感じられるか?もしも、軽いと感じたら、生活を修正せねばならない。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフレーム ← コラボで実験しながらつくるオリジナル素材による店舗デザイン:マテリアルス…

木戸をあけて

あなたの後ろ姿に そっと別れをつげてみれば あなたの髪のあたりに ぽっと明かりがさしたような 1970年代の青年の心のありようを小椋佳の詩は教えてくれる。青年は、こんな切ないまなざしを周囲へ向けて家出をするんだろうか。書かれていることはシンプ…

SAKURA

「桜」をどのように表記すれば、今の心を表すことができるだろう。今年は、アルファベットの大文字表記がいいかなあ。少し距離を置いて、水平に広がる桜の花が、雨風に散りゆく様子を、ずっと眺めていたい。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフ…

飽きられる空間

「インパクトの強い空間は、飽きられてしまいませんか?」いや、問題は「インパクトが強いか、弱いか」ではなく、「閉じているか、開いているか」なんです。開いていれば、変遷することができます。いつも何か違うものを発見することができるはずです。 ← 創…

天草四郎

わずか16歳で、島原の乱の最高指導者とされる。人物イメージが、時代とともに激しく変遷したのは、単に分かっていることが少ないからだろうが、きっとどの人物像にも程遠いのだろう。400年ほど前に数万人が小さな美しい島で非情な殺し合いをしたという…

天草

熊本に生まれながら、これまで天草を訪れる機会がなかった。静かで、美しい島と聞いていた。海は澄んでいる。緑が多い。日本はどこもそうだが、この自然の美しさを、建築は生かすことができていない。例えば、海を見下ろすことができるカフェは皆無だ。日常…

エープリルフール

陽向は昨日、初めて飛行機に一人で乗って、熊本へ行った。彼の不安そうな顔は、そのときになったら、緊張した凛々しい顔に変わった。ぼくらが彼を信頼するのは、いつも彼がそうだからだ。そして、今日はエープリルフール。きっと、彼はぼくらがいないのをい…