出演を予定していた星野道夫の突然の死から始まった「地球交響曲第三番」の撮影の旅。
龍村仁監督が『魂の旅』という本で書いているのが、表題の言葉だ。
「壊れてよいものが壊れていく。壊れてはならないものは決して壊れない。」
熊を愛した星野が、熊に襲われて命を失った。彼の魂に導かれて、計画を失った映画が撮り進められていく。
この言葉は、その経過を描いた本に書かれている。
いわれのない不幸が存在する、としかいいようのない現実を突きつけられている人々にとっては、受け入れ難い言葉であるに違いない。
しかし、ぼくらが今の人生を生きるにあたって、上のような信念によって、生死を天に任せることができれば、信じる道を迷いなく突き進むことができるだろう。
生前、星野は「熊の凄いところは、人間を一撃で倒すことができることなんです。」と監督に言っていたらしい。
自分を安全なところへ置かないで、道の真ん中を歩いていくこと。
ぼくらは、そのように生きる潔さ、美しさを、自分のものにできるか、と問われている。