他のジャンルの音楽について何も語ることができないように、ジャズについても何も語ることなどできない。
森敦『意味の変容』に「クラシックの精妙巧緻を粉砕して、始原をとり戻そうとするものである。」とあるが、クラシックの何たるかをつきつめた者がジャズを発明したわけでもないだろう。
ぼくはジャケットを見て、聴きたい音楽を選ぶタイプの人間だった。だから、コルトレーンが好きだ、といっても、ジャケットの写真が好きだ、という理由が半分くらいを占めている、といっていい。
しかし、何も語れないとしても、ジャズが好きだ。たぶん、理由を書こうとすると、全部嘘が混じる可能性が高い。