陽向が食べた跡は、とても汚い。
それでも、ずいぶんましになった。
これから、箸の使い方などを教えはじめるところだが、きれいに食べるということは、実はぼくにとっても簡単なことではない。
今日も、カフェのテーブルで、ケーキを前にして、どのように食べようか、と考えている自分に気がついた。
クリームがどのくらい柔らかいかによって、スプーンで切ってすくう量を推定しながら、それが予想と異なれば、落ちる前に口をスプーンの方へ持っていく。
そのスピードが少しでも遅ければ、クリームは落ちて散乱する。
半世紀近く生きてきても、きれいに食べることは難しいのだ。
ずっと昔、アヲハタのマーマレードのコマーシャルで、美人の女優さんがマーマレードを大胆に指につけて舐める、というシーンがあった。(そんなCMは忘れられない・・・)
もちろん、ギャップがそのCMの魅力なのだが、きれいに食べるということが必ずしも最も美しいわけではないことの好例だろう。
食べるという行為の美しさについて、ちょっと考えてみたい。