共存していたギリシア系とトルコ系の住民が、突然敵同士となって殺し合う。キプロス島にはそんな暗い歴史がある。
ぼくが訪れたときは、空がどんよりと曇っている日が続いていた。建物の壁にある無数の銃痕を眺めて、ぼくはどんよりとした気持ちになった。
高いビルはひとつもない。草に覆われた大地。訪れてから20年が過ぎて、ぼくの中にはそのような風景が残されている。
そういえば、そんな風景を夢に見ることがある。誰も知らない、どこにあるとも分からない場所。でも、そこへ行きたいと切望する自分。
今、それはキプロス島で見た風景だった、と思い出した。