カントの『道徳形而上学原論』に、「他者を手段のみならず、目的として扱え」という内容のことが書いてあるそうだ。
それについて、柄谷行人が書いていることを、これまで何度も読んできた。
ぼくは、グリッドフレームのコンセプトとして、今までいろいろなことを考えてきたが、手段と目的はいつも渾然一体としていて、それゆえに自分を含めて、関わる人を混乱させてきたと思う。
だが、ようやく「それでよいのだ」ということに気づいた。
今、ぼくならこういうだろう。
「手段であると同時に、目的であることを探し、それを行え」
創造性の連鎖は、まさに、手段であると同時に、目的である。
創造性の連鎖とは、ある一人の考えによって統制されない、開かれた空間を実現し、次の連鎖を可能にする(その結果、その店が永く続くということも可能にする)ための手段であると同時に、連鎖に参加する一人ひとりがそれぞれの創造性を存分に発揮する、という目的でもあるのだ。
ぼくたちがつくらせていただいた店のほとんどが永く続いていることを確認し、ようやくこのような確信を得ることができた。