ぼくは20歳のとき、初めての一人旅だったアフリカから帰ってきたと思ったら、その途端にA型肝炎を発症し入院することになった。
そのとき、姉貴が退屈しのぎにと持って来てくれたハイファイセットのアルバム「PASADENA PARK」をイヤホンでおそらく100回くらい聴いた。
いくつかお気に入りの曲があるが、「真夜中のTV」を消灯後の病室で聴きながら、暗闇の世界でひとり取り残されたような気持ちになって、呆然としたことを思い出す。
次のような歌詞だ。(うろ覚えで、間違っているかもしれない)
真夜中のTV
語り合ったわね
いつの間にか終わったテレビの 明かりに浮かんだ部屋
かすかなノイズは 遠い夏の海に似てる
私たちのことだったわね
今話してたこと
終わる愛をかなしいくらい
おだやかに見つめて
明かり消しましょう
なにも映らない
時を止めましょう
憎みあうまえに
ボーカルの山本潤子の声がニュートラルな感じなので、孤独の闇が宇宙まで広がっていく。
「私たちのことだったわね 今話してたこと」という感覚。いつもあたりまえに目の前にあったものを失ったときに、ぼくたちに押し寄せてくる心の波は、かならず遅れてやってくる。
後悔をするな、なんて無理な話だ。