gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 太陽に灼かれて

1994年。ロシア・フランス。

観終わったあと、しばらく椅子から立ち上がる気にならず、沈黙して考え込んだ。

このずっしりとした重厚感はどこから来るのか?ロシア(ソ連)という国と関係があるのか?

スターリンの大粛清。でっち上げで、有能な将校が次々と殺害された時代。かつての戦果で知られた存在であるコトフ大佐は、小さな村で平和に家族と暮らす毎日を送っていたが、そんな場所へも秘密警察はやってくる。

愛情とユーモアにあふれる非の打ちどころのない人格者を連れて行くのは、この村の出身で、コトフ大佐の妻マルーシャの昔の恋人だったドミトリ。彼自身が、彼の歪みを知り尽くしていながら、どうしようもできない。

スターリン自身、周囲は全て敵ではないか、という猜疑心を抱いて、200万人にも及ぶ大粛清を行ったらしい。この時期のソ連は、まさに正体不明の恐怖が支配した国家だった。

たった一日のうちに、コトフ大佐は英雄から犯罪人に陥れられる。その間、コトフ大佐がやったことは、この国に蔓延した恐怖を家族の中に入れないことである。家族に悟られることのないように、彼は笑顔で秘密警察の車に乗り込む。

娘のナージャは、最後まで笑顔を絶やさない。

「子供は朝起きたら、もうニコニコ笑っている。」と今朝、妻が言った。なぜ、大人はそのように生きることができないのだろう。

この映画を見て、そんなことについて、考え込んだ。

グリッドフレームのHPへ ← グリッドフレームのHPはこちらです