「私たちが原始人だったころ、夏に汗をかくことには爽快な感覚があっただろう」と鍼灸院の先生はおっしゃる。
汗をかくことを爽快に感じる人が健康なのだ、と。すばらしい。こんなにわかりやすいバロメータはない。
子供の頃、我が家にエアコンがついたのは、私が中学生のころだった。エアコンの前で、冷たい風に吹かれることには至上の幸福感があった。汗が引いていく幸福感だ。
だが、エアコンのある生活があたりまえになって、東洋医学的にはずいぶん人の体が変わってしまったのだろう。先生の言葉で言えば、体に冷えが入っている人が多いだろう。
それは、体の抵抗力が失われることだ。
もちろん、原始人だって日照りの夏には日陰を探しただろうし、冷たい山の水も飲んだだろう。自分にとっての自然とはなにかを個々人が探せばよいことだ。
自分が原始人だったら、という想像力を働かせるのは楽しい。