gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

校歌

私は父の転勤によって、3つの小学校、1つの中学校、2つの高校に通った。そして、そのそれぞれの校歌を憶えている。

それぞれが故郷礼賛的な歌である。その土地のごく小さな山や川が、まるで聳え立つ高山や大河のごとく歌われていて、素敵だ。

そして、素直で健やかで勤勉な児童や生徒しか描かれないのも、嫌いではない。

そうでない子供たちには容赦なく往復ビンタが打たれ、時折先生の機嫌によって悪くない子供がとばっちりを受けたとしても、子供も親もまあそんなこともあるさ、と黙っていた。実際、そんなことは大した問題ではなかった。

誰もが、故郷の山や川はそんなに高山でも大河でもないことを知っていたし、自分たちはそれほど素直で健やかで勤勉でないことを知っていたし、先生や親が完璧でないことも知っていた。

全国高校野球大会が始まり、また校歌が鳴り響く季節がやってきた。校歌にリアリティなんていらない。そして、高校球児は素直で健やかで勤勉な生徒を完璧に演じきるとよい。

そうでなくとも構わないが、それはそれで見ていて気持ちがよい。

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