1985年。ガス・ヴァン・サント監督。
メキシコからの不法入国した少年に、恋心を抱く白人青年。舞台はオレゴン州ポートランド。
社会の隅に押しやられた、放たれる場のないエネルギー。
モノクロの画面が、観る私たちにとって、どこかここにない場所を想起させる。
登場人物たちは皆、彼らなりに誠実であり、だから、切ない。
ここのところ、自由というものについて考えている。登場人物たちは自由だろうか。
同性愛者であることに戸惑いすらない白人青年は、恋焦がれる少年に避けられ、決して辿り着くことができない。白人青年と警察から逃げ回りつつもこの町にしか居場所のない少年。
社会から「自由」を与えられている青年。「自由」を与えられていない少年。だが、本来的な自由とは、単に与えられる類いのものではないだろう。
だが、どちらも、欲しているのに、決してそうならない生活。なにも変らないまま、いたずらに過ぎていく時間。
私たちの日常とは遠く離れたところで、過剰なもの(=混沌)にまみれた生活。何が起きても不思議ではないが、同時に、何も起きなくても不思議ではない。
彼らが、私よりも不自由とはいえないだろう。本当は、私も混沌の中に生きている。それに蓋を被せようとすること自体が、不自由であろう。
混沌に寄り添うリアリティの持つ映画の美しさに、引き込まれる。