さっき、陽向が壁に写った自分の影に初めて気がついたようだ。
まるで何かを発見したかのように、30分以上も指をさしては何かを喋りつづけた。そして、そばにいる私の影を指さして「パパ」と言った。その後、私が移動して、私の影も移動した。陽向は、幽霊でも見たかのような恐怖の顔をして、私の顔を確認するように見上げた。
きっと、今の陽向にとって、影は誰かに属するものではないのだろう。陽向は自分の影を友達のように思って話しかけ続けたのではないか。
私の影も、私とは独立した「パパ」だったのだろう。動くものはそれぞれが独立して存在する。陽向の世界はそのように成立しているのだろうか。