gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

大外刈り

柔道に大外刈りという技がある。

右の組み手であれば、左足で相手の両足の向かって左外側へ大きく一歩踏み込むと同時に上半身を寄せて、右足を同じく向かって左外側の前に出し、相手の右足を相手の背後から刈り、相手を自分の前方へ倒すという大技である。

私は柔道を習い始めたとき、最初にこの技を教えられたと思う。つまり、最も初歩的な技である。

自分の踏み込みに勢いがあれば、相手は倒れるが、勢いが止められれば、実は相手も全く同じ体勢になっており、反対に自分が背後に倒される。それを大外返しという。

勢い、と書いたが、つまりは、自分と相手の重心の位置がどこにあるか、である。組み合った二人の重心が相手側にあれば相手が倒れ、自分側にあれば自分が倒れる。投げ技では逆の関係になるが、いずれにせよ全ての技は重心の位置で決まる。

大外刈りは、柔道がそのような競技であることをシンプルに示してくれる。

柔道に限らず、勝負事は全て大外刈りをお互いに掛け合っているようなものだ。一本をとるか、とられるかは、外からは読めない。内で動めく重心の位置を、静かな心で読み取り、ここだと思った瞬間に全エネルギーを爆発させる。

読み間違えたら、負けだ。