gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

父が逝く 5

父が事故に遭った場所は、自宅から2〜3キロ離れた場所だった。父は、会社のOB会で陽気に酒を飲んだ帰りだった。

タクシーで帰ってきた父が、なぜ、家までもう少しのところで、しかも周囲にこれといって何もない暗い通りで降りたのか、分からない。

父には父の理由があるだろう。もし、私が死んだとしても、やはり私にしか理由のわからない行動を最後にとるかもしれない。例えば、私は外苑のイチョウ並木の19本目のイチョウのことを特別に気にしているが、それがふと気になって、そこへ向かったとしたら、誰も行動の理由を想像できないだろう。

父にもそんな特別な何かがあったかもしれない。

あるいは、母が推理することが正しいかもしれない。今までも、父の行動に関する母の推理は、まず、外れることがなかったから。

そのときの父の行動や気持ちをたどりたい、という家族の想いは募る。