gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

父が逝く 4

17年前、私はアメリカに留学中だった。その頃、両親がそこへ遊びに来たことがあった。

3人でアメリカのいろんな場所を車で旅した。広大な景色の中で、何度も感嘆の声を上げたことを昨日のことのように想い出す。

父は言った。「稔郎はいろんな国へ行ったから、そうは思わんかもしれんが、親子での海外旅行は、人生の一大イベントだぞ」

私はきっと、これからも何回だってこんな機会が待っている、と想っていた。だが、両親との海外旅行は、これが最初で最後となった。

想い出せば、夢のようだ。父は、ビデオカメラを回しながら、「荒漠たる原野が、どこまでも続きます」とナレーションしていた。どこへ行っても、このフレーズでナレーションが始まった。

想い出せば、夢のようだ。