gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

父が逝く 2

予感はあったかもしれない。けれど、人は後から考えて、よくそう思うことがある。それだけのことかもしれない。

77歳の父は、「90歳までは生きたい」と言っていた。たしか、昨年は「85歳までは」と言っていたのに、1年で目標が5歳延びていた。きっと、それだけ体調が良かったのだろう。

死生観はさまざまだが、私は、今の自分が幸せであることをしばしば語る父に、どこか不安を感じていた。陽向の誕生を誰よりも喜び、そして、陽向が私以上に父に似ている気がすることにも。そこにネガティブなことは何もない。命をスッとさらわれるのは、むしろ、そんなときである。

運命は、バランスをとろうとするかのようにふるまうのだから。

死は、いつも私たちの傍らにある。その暗闇へ私たちをスッと飲み込む。まるであたりまえの顔をして。そして、入口で遺族がどんなに悲嘆にくれようと、決して吐き出してはくれない。

父は向こう側へ行ってしまった。元気な残像だけを置き去りにして。はつらつとした大きな声、晴れやかな笑顔、少し顎を上げる癖、それから・・・。