死者はストーリーの中で何度でも甦えらせることができる、と作者はいう。
幼い日に死んだガールフレンドも、戦争で死んだ仲間も、戦争で殺してしまった敵も。
アメリカ兵たちは、身の周りの死を、ジョークによって乗り越えていく。死者に「それ了解」などと言わせながら。
日本兵は、どのようにして身の周りの死を乗り越えたのだろう。ジョークなど許されなかったであろう環境で。
もし生きて帰ったとしても、戦争に行ったということは、心が不治の病に侵された、ということに等しいだろう。狂った世界を目の当たりにせずに、帰ってこれれば別だけれど。
作者は、ストーリーを書くことによって、悪夢と闘っている。それは、生死を賭けた闘いなのだろう。
日本に戦争経験者は数少なくなった。それぞれは戦争の悪夢とどのようにして闘ってきたのだろうか。
いずれにせよ、兵士はけがを負っていようがいまいが、満身創痍である。彼らはなんとかして人間でいようと、微妙なバランスをとろうとするだけだ。