gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 北京バイオリン

中国と西洋クラシックとの組合せが魅力的だ。冒頭の田舎町のシーンは、まさに中国、という風景で、期待を盛り上げる。

聡明で垢ぬけた主人公の少年と、田舎者そのものの風貌の父親が、少年をバイオリニストにするために、北京へやってくる。

貧乏人と金持ち、田舎者と都会人、無名と有名、本質と表層、様々な二元的なものが混じり合った状況を表現するには、現在の中国が最もふさわしい舞台なのだろう。

中国人のエネルギーがほとばしる。ほんのささいなやりとりでも、けんか腰になってしまう中国人たちの会話が、なんだか愛おしく感じられる。「あたたかさ」ではなく、「熱」がそこにある。

リリという美女のなんと中国的なことか。普段は、性格が破綻しているといえるくらいにわがままでけんかっ早い。しかし、事が起こると、誰よりも情に厚く、義理堅い。日本やほかの国にもこのような女性がいないわけではないが(ひょっとしたら、いちばん身近にもいるかもしれないが)、そこに感じられるものは、やはり、「あたたかさ」ではなく、「熱」であり、中国的なものの象徴を見る思いがする。

確か、コンクールのリハーサルの映像で、西洋的な舞台に、中国的な大きな壺が二つ飾られていた。その不思議な融合というか、衝突が、タイトル「北京バイオリン」そのものであり、そこに「熱」が生じている。

私には、それがとても心地よかった。