gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

「なる」の空間 2

一方で、つくろうとした通りにできあがった空間、つまり「する」の空間というものがある。・・・というより、こちらしかないし、そうでなければならない、と一般には考えられている。そして、「する」の空間をきっちりとつくれる人々のみをプロと呼べる、という考えがまかり通っている。なぜなら、設計通りに行かないことは、すべて失敗とみなすから、である。もし、そうであれば、設計者が設計図をつくった時点で、創造はすべて終わっていることになる。創造という意味では、実物をつくる必要など全くないことになってしまう。

また、一つの設計図を元にすれば、誰がつくったとしても同じものができあがるという通念がある。これが、施工会社の入札制度や相見積の大前提となっている。これは、実物をつくる人たちは、取り替え可能な存在としてみなされている、ということである。つまり、かけがえのない存在とみなされていないのだ。

誰もがつくれるものを前提とした設計に、冒険は許されない。つくりやすいことが、できあがりの良し悪しより優先されて設計される傾向がある。多くの場合、制作の途中に表れるハプニングなどによる「できあがりを良くするチャンス」は見逃されてしまう。

つまり、「する」の空間のみを評価する社会では、本当によい空間はできあがりにくいのだ。

しかし、空間をつくることは本来もっと多様で豊かな行為である。今の社会には、こんな基本的なことが忘れられている。

(つづく)http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20100402/