gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 麦の穂をゆらす風

美しい田園風景を背景とした優しさにあふれる映画、を期待して選んだタイトルだったが、ものの見事に予想は外れた。

1920年代、アイルランド紛争の名もなき戦士たちの物語。虐殺シーンあり、拷問シーンありで、優しさなんてあったもんじゃない。

英国圧政下のアイルランドで、IRAは祖国独立のために各地でゲリラ戦を展開する。英国軍人によるアイルランド人に対する日常的な暴力は、目を覆うばかりで、とても同じ人間のすることとは思えない。

やがて、英国とアイルランドが条約を締結し、英国軍は引き上げる。しかし、その条約が、アイルランドの完全独立を意味するわけではないことで、国内に現実主義者と理想主義者の対立が起こる。

かつてはともに戦った仲間同士が、敵味方に分かれ、殺し合う。かつて英国軍人がやった、とても同じ人間のすることとは思えないような行為を、今度はかつての仲間同士でやりあうことになる。

主人公である兄弟同士も、例外ではない。最後は、兄が弟を敵として処刑をして幕を閉じる。

「ぼくらはおかしな国民だ」という弟のセリフが虚しい。

映画としては、まじめすぎる。安易な救いが欲しいわけではない。ただ、生きるにはユーモアが必要だ。息を呑むような美しい風景が必要だ。一見、無意味とも思われるようなカットがない映画で、構造だけをドンと突き出されても、想像は空を飛べない。

きっと私は、晴れ渡る空と、太陽を見たかったのだろう。