日曜日の朝、電車は空いている。渋谷駅で山手線内回り電車へ9時45分に乗り込む。ふと1周してみたくなったのだ。
乗り込んだとき、車両端の4人席をおじさんが横になって独り占めしている。熟睡中らしい。みな、ちらりと見ながら乗り込むがさほど気にしてもいないようだ。日曜日の朝だし。
東京の外側を向いて立ち、文庫本を読みながら電車に揺られる。
品川駅で電車はガラガラになる。東京の外側を向いたまま座る。ときおり、窓の外を眺めるなら、景色は外側へ広がっている方がよい。
東京駅でふと熟睡していたおじさんの方を見ると、すでにいなくなっている。
秋葉原駅でまた少し人が増える。赤ん坊を抱いた女性が私の横に座る。赤ん坊が、私の顔を見ているのがわかるが、私の視線は文庫本から動かさないようにする。
私が一心不乱に読んでいる様子なので、赤ん坊は今度は文庫本の方を見る。そしてまた私の顔を見る。「まあまあ面白い本だよ」と、心の中で話しかける。
日暮里駅でその二人は降りる。
ちょっとのどが渇いてきた。電車が混む前にどこかの駅で缶コーヒーを飲もう、と大塚駅でホームへ降りる。10時23分。
ゆっくりと缶コーヒーを飲み終えるとちょうど次の列車がやってくる。次は池袋駅。ここからは日常的に利用している区間である。
代々木駅で降りると、10時40分。約1時間、小旅行をした気分になる。
日曜日の朝、手段ではなく、目的として、電車に乗る。