イスラム建築の幾何学への異常ともいえる執着には、「まいった」としか言葉がでない。このようにつくってくれと言われたら、まずどうやってつくるかを考えるのに何年か費やすことになりそうだ。
にもかかわらず、アルハンブラ宮殿の印象は「複雑」ではない。もちろん、白を基調としていることも手伝っているが、すっきりと洗練された印象が残る。静かで凛としている。
空間が私たちに対して語りかけてこない。静かに私たちを見ている。そんな空気を感じる。
1492年、この城塞が陥落して、スペインのレコンキスタが終わった。この白い空間で血が流されたのだろうか。にわかには信じ難い。しかし、アルハンブラとは「赤い城塞」という意味らしい。