gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

汚しうる美について2

「グロテスクなものを趣味とするのは、実はグロテスクな体験と本質的に無縁だからにすぎない。」柄谷行人「夢の世界」(「意味という病」に収録)

「汚しうる美」というコンセプトを掲げたころ、周囲から上がった声は、汚しうる美というものが、要するに、「個人的なゲテモノ趣味ではないか」というものだったと思う。私は、そう言った人たちを説得することはできなかった。率直にそのことを悔しく思っていたときもある。

だが、私にのっぴきならない動機があるのか、それとも趣味にすぎないのか、などという議論に意味はない。「汚しうる美」など必要ない、と感じた人にとっては、「汚しうる美」は存在しないのだろう。ただ、それだけのことだと思う。

あらゆる壁は石膏ボードで覆われ、壁紙が貼られていく。そこには、「きれい」と「美しい」は別物であることが忘れられている。なによりも、それは退屈でつまらない造作である。私たちが求めているのは、私たちが関わる人々全ての「生きている」という実感である。

美の可能性のあるものに対して、ゴミのように蓋をかぶせてしまう現実を、私は悲しく思うし、変えたいと思う。