かつて父はよく思い付きでいろんなものを買ってきた。
キッチンカーの焼き鳥屋さんを見ては、「売れてなさそうだったから」と3パックくらいの焼き鳥を買ってくる、とか、無計画ではあるけれど、どこかに胸があったかくなるような愛が感じられた。
家で迎える母も、そんな父に対して、なんとなく微笑んで見せるようなおおらかさがあった。
そんな家で育てられたことに、ぼくはとても感謝している。
さて、自分のお金で買い物をしたことがほとんどない陽向が今日、交通費としてたまたま持っていたお金で、大きなピクニックバッグを買ってきた。
そして、帰りのお金が足らずに、改札で駅員さんに迷惑をかけた。再度、支払いに来るという約束で改札を出してもらえたが、陽向らしい事件である。
陽向がなぜピクニックバッグを選んだのかよくわからないが、その向こうに家族の笑顔が浮かんだのかもしれない。
ここは両親を思い出して、笑っていよう。