「ねえ、パパ・・・ぼくもいつか死んじゃうの?」
「そう、ずっと先にね。パパやママがずっと先に死んじゃった後のまた、ずっと先にね。」
陽向は「ムゲン」という言葉を覚えてから、きっとその意味を知ろうとしている。
空間と時間の無限。
ぼくが子供のころも、夜、寝床に入ってから「宇宙の外はない」ということを頭に描くと、怖くて眠れなかった。
地球にもまた、寿命があるといわれる。宇宙も始まりがあったならば、やはり終わりがあるだろう。
終わりがあるのなら、なんのためにぼくらは努力をするのだろう?
「みんなが愉しく生きられるように。」
ぼくの父ならそう言うだろう。
父が大事だと思うことを、ぼくも大事だと思い、そのために有限の時間を生きる。
そして、陽向もまた、それを大事だと思ったら、そのために有限の時間を生きればよい。
その大事なことだけがムゲンの中にいる。頼りなく見えるけれど、きっとしっかりしている。今の陽向のように。