gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 パリ テキサス

1984年。ヴィム・ベンダース監督。

 

ずいぶん前から観たかったのに、たどり着けなかった、という映画が、この情報が氾濫した時代にも、いろいろある。この映画もその一つだった。

 

サンアートキネブチさんを初めて訪ねたら、棚に並ぶ20本ほどのDVDの中にこの映画を見つけて、思わず「貸してください」と言ってしまった。キネブチさんに感謝。この小さな偶然がなければ、ぼくは観たいというぼんやりとした希みをどこかに抱えたまま、ずっと生き続けただろう。

 

もちろん、映画だけではない。そうやって、さまざまな求めているものにたどり着けないまま、一生を終えることになるのだろう。

 

まあ、それでいい。仕方がないことだ。つぎの偶然の出会いを待つ。・・・それがいい。

 

・・・主役のトラヴィスが親子3人の4年ぶりの再会を目前にして、夫として父としてその場から一人去らなければならなかった心を説明すれば、これに近いかもしれない。今はまだ、そのタイミングではない、少し、違う、と。

 

もし、未来に、偶然の出会いがあったとしたら・・・、またそのときに。きっとその方が、傷つけ合うこともない。

 

テキサスの空き地にパリという名前がついているという些細な偶然から、トラヴィスの父は母に本場パリの淑女のイメージを重ねる冗談を言い始め、やがて本当に淑女であることを求めるようになってしまった。

 

そんな笑い話にもならないバカげたことで、人生は動き、壊れていく。


まあ、それでいい。仕方がないことだ。つぎの偶然の出会いを待つ。・・・それがいい。