「ダンゴムシがひとりぼっちだったから・・・」
陽向が講道館の入口で見つけたダンゴムシを、受付の人にビニール袋をもらって家に持って帰ってきた。
「家で飼っていい?」
そのことをすっかり忘れてしまっていて、ベッドに横になってずいぶん経ってから突然思い出した彼は、横で寝ている母親を起こして、
「・・・ねえ、袋から出さなきゃ。」
袋から出して、ちいさな瓶に入れて、穴を開けたビニールの蓋をかぶせる。
「ダンゴくん」と名付けられたそうだ。
朝になってその話を聞いて瓶の中を見ると、ダンゴくんは乾燥して弱ってしまっていた。
パラワンがいる虫かごの土を少し取ってかぶせて、霧吹きで湿らせて、好物と書いてあったキュウリを置いた。
でも、陽向が出かけた後、ひとりぼっちのダンゴムシはもう動かなくなっていた。
「陽向が帰る前にダンゴくんを土に還して、ダンゴムシをとってこよう」
母親が言うから、夕方になって二人でダンゴムシを探しに出る。
マンションの入口近くの花壇。葉っぱの陰にダンゴムシを見つけてとってくる。
よかった。ちょうど、同じくらいの大きさだ。
陽向が帰って、瓶の中のダンゴムシを見て、叫ぶ。
「色が薄くなってる!」