ぼくがこれまでの半生で出会った本の中で、最も影響を受けている森敦の『意味の変容』はすでに絶版になっている。
かろうじて、中古の本がアマゾンで手に入るが、読む度に受け取るものが変化する、あれほどの優れた本が絶版になってしまったことは、残念ながら、現在のこの国の人々を象徴的に表していると思うとしかいいようがない。
もちろん、偉そうに言える立場ではない。ぼくは、同じ本をゆっくりと何回も読むタイプだから、今までに読んだ本の数は知れている。そして、カントやスピノザなどのいわゆる古典的な哲学書は、途中で放り出してしまうくらいの知的レベルに過ぎない。
けれど、考え続けると、新たな視界が開けることを教えてくれたこの本を、ぼくは今のうちに集めておいて、いつか、誰かにプレゼントしたい。
まっすぐに向き合えば、必ずその人の人生を豊かにしてくれるだろう。