「日本人の住まい方を愛しなさい」という2002年に発行された本をその頃に買ったけれど、一度も目を通すことなく、13年間眠らせていた。
命令形のタイトルに反発したのか、たぶん一生読まないだろう、とときおり本棚にならぶタイトルを見ては、そう思っていた。
では、なぜ買ったのだろう。思い出せない。我が家には、そういうものがたくさんある。
日本の台所、というものについて考えたい、と思ったとき、この本があることを思い出して、初めて開くことにした。
実際、読んでみると、最初から刺激的なことが書いてある。
「食物とは、動植物の屍体である。その生命組織は崩壊の過程にある。その実感が保たれている限り、より健康で安全に、食べていける。」
そのためには、「台所は外界に、土に、水に、風に、太陽に向けて、もっと開かれた空間になっていかねばならない。」
だから、台所は土間にあった、と。「生命の輪廻するところ」として。
時代は、その本質を取り戻していこう、という意志を持ち始めている。
本とはおもしろいもので、ずいぶん時が経ってから、新しさを感じるものがある。