gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

生きている感触

「深夜、すべての物音の消えた静寂のなかで、ただひとりたちむかわざるを得ない、孤独な作業である。」(磯崎新『見立ての手法』p.229)

ぼくが26歳のときに建築を志して、最初に読んだ建築の本が『見立ての手法』だ。そして、上記がその中で最も印象に残っている文章だ。

これは建築家・白井晟一について書かれたものだが、もちろん磯崎新もこのような孤独な作業を愛しただろう。

この一文が、ぼくの心に響いた。それも、上のような深夜だったことを憶えている。

それは建築に限られることではないだろう。だから、ぼくは建築をやりたかったわけではない。このような孤独な作業を、生業にしたかったのだ。

以来、ニューヨーク州立大学で毎晩をそのように過ごし、31歳で二度目の学生生活を終え帰国した後、会社を創め、空間づくりの仕事に漂着してからも、ずっとそのように過ごしてきた。

何かが生み出された瞬間は、生きているという感触を得られた。紛れもなく、幸福な時間だった。


自分がよいと思うものを、近しい人にもそう思ってほしい、と思うのは、人間にとっての自然だ。

空間を構想して、できあがるまでには数人が関わる。その人たち全員が、上記の「孤独な作業」を経験しながら空間をつくっていけるならば、参加者全員が創造の幸福を感受できるだろう、と思った。

そして、結果としてできあがる空間は、すばらしい空間になるにちがいない、と確信した。


この発想が「創造性の連鎖」の源泉である。

ここでいう「生きている感触」が、誰にでも当てはまるかどうかはわからない。

確かなことは、そのようにしてやってきた会社がすでに18年目を迎えようとしていることだけだ。


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