2001年、メキシコ。
10代の青年2人と美しい大人の女性が、本当にあるかどうかもわからない「天国の口」という名前のビーチへ旅をする。
青年2人のお気楽でバカバカしい快楽的な生活の背後には、メキシコの厳しい現実がしっかりと描かれている。反政府デモ。道端の死体。村人の貧困。警察の検問。・・・その落差が怖い。この無防備な青年たちに、いつ襲いかかってくるともしれぬ現実。
そのような目でこの映画を追っていくことを強制されるが、結局最後まで何も起きない。最後の最後で、一緒に旅した美しい女が、彼らと別れた2ヶ月後に死んだ、ということを聞かされるだけだ。肩透かしを喰らったと思っていたところに、重い現実がボンと置かれる。
明日が今日と同じようにある、と思っていた10代。自分の年老いた姿など想像すらできなかった。そのような心がなすことは、後から振り返ると、痛い。子供から大人へ成長する旅。
・・・いや、むしろその逆こそが真実ではないか、と思う。青年2人は、すでに十分すぎるほど現実を知っていた。大人がいかに醜いかを知っていた。だから、バッタリと再会した2人は「仕方なく」コーヒーを飲むのだ。
彼女の死によって、彼らの旅は永遠に彼らの心に刻まれる。その秘密を共有するがゆえに、2人はお互いにそっけなくふるまう。
2人は知っている。子供は大人になどなるべきではない、と。