英国王室マニアのアメリカ人男性が、バッキンガム宮殿前の公園で、「だれにもじゃまされず宮殿の絶景がのぞめる場所」でひっそりと息を引き取り、最近白骨死体として発見されたそうだ。
なんとなく漠然と気持ちが重くなるような事件だ。
この人は、将来に希望を持てなかったのではないか。たった一つのことでもこの世で夢中になれた、ということを証明したいがために、このような死を選んだのではないか。そして、なによりも、彼と同じような精神構造の人が、アメリカよりも現在の日本にたくさんいるのではないか。
私自身、この事件に対して、あまりインパクトがないことに驚く。不思議でもなんでもない。日常的な印象すらある。
気が重くなる、というのは、そのことだ。
80年代に中国を旅しているときに一緒になった日本人が、大河が氾濫した後、人がぷかぷか浮いているのを横目に、談笑しながら通り過ぎる地元の人たちを見た、と言った。
その空恐ろしさが、もう近くにきているのかもしれない。