目の前に果てしなく広がるサハラ砂漠。そこへ向かって足を踏み出す気持ちを憶えている。
雲のない青い空。下に広がるのはうすいベージュ。美しいコントラストだ。だが、それは死の世界だ。足を踏み出せば、自分もまた、砂粒になるだろう。
息苦しさとすがすがしさが同居する、不思議な気持ち。いや、息苦しさとすがすがしさが交互にやってくるのかもしれない。それは、あせりと冷静が交互にやってくるからだ。
難局を乗り切ろうとするときに、これと似た心持ちになる。いつだって、冷静でいられる者にしか勝つ可能性はない。
砂漠に水をまくことも、冷静でさえいれば、決して無駄ではない。