gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

初めて日本を出たとき

20歳のころ、私が乗ったパキスタン航空の中古旅客機は成田を飛び立った。初めての海外旅行。一人旅。行く先はケニア

隣には28歳の青年実業家。彼の行く先はフランス。彼も初めての一人旅。初対面で顔を合わせるなり、彼は一人旅の不安について、8歳下の私に延々と語り続けた。彼に「大丈夫ですよ」と根拠もなくなだめ続けたおかげで、私は自分のことを随分と頼もしく思えてきた。幸先が良い。

そのうち、飛行機が東シナ海の日本国境を越えた。私は異常に興奮した。国境を越えた。もう、ここで死んでもいい。確かに、それくらいに思った。

目に見えぬ国境を越えて、外へ出る、ということが、どういうことなのか。それはなにか自分を縛り付けていたものから解き放たれることのような気がした。

アフリカについたころには、私はもう違う自分になっていた。自分ではそう思える。日本では引っ込み思案な自分が、随分積極的で活動的になっていた。自分にできないことはない。そう思うくらいに自分が頼もしかった。

日本に戻れば、また引っ込み思案の自分に戻っていた。けれど、自分には別の自分が潜んでいることを知っているということが、その後の人生にどれだけ自信を与えたことだろう。

ボーダーを越えること。そこには人間を変える秘密がある。

空間を考えるときの重要なファクターのひとつである。