猫のあとをそっとつけていくのは難しい
ぼくが通れないような狭い場所をすり抜けて
視界の向こうへ消えてしまう
今日も電柱と壁の間に挟まったまま身動きがとれなくなったぼくにできることは
ぼくを撒いた猫が今、何を見ているかを妄想するだけだ
・・・段ボールの中でクンクン泣いている捨て犬の兄弟たち
・・・コンクリートの継ぎ目から伸びてきた石蕗の鮮やかな黄色
・・・警察に追われて逃げ込んだ、荒い息をつきながら頭上の細い青空を見上げる、涙目の泥棒
そんなものたちにあのクールなまなざしを向けながら
あの猫はただゆっくりと通り過ぎる
でも、ぼくら人間はジタバタするために生まれてきたんだよ