1988年。イタリア。
この映画のすばらしさは、ちょうどぼくくらいの年の者(50代)が実感するのかもしれない。
人生80年を20年+30年+30年と3つに分けて考える見方を、この映画は提示している。
トトの人生は、幼少から学生までの20年を描き、それから30年はアルフレードに教えられた通り、彼自身の才能を余すところなく生かす時期だったことを示しつつ、何も描かれない。そして、50歳を過ぎたトトにアルフレードの死去の知らせが届く。知らせたのは、きっと80歳くらいになった母だ。
トトは、アルフレードの教え通り、30年間一度も帰郷していない。彼は帰る時が来た、と知る。
20歳の頃のかなわなかった恋が、アルフレードから渡った映画のフィルムによって一気に蘇るラストシーン。
これからトトの次の30年が始まることを感じ、そして、ぼくはぼく自身の次の30年について考える。