gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

固有名の力

鋸山の石切場にインスピレーションを受けてつくった壁が完成した。

 

仕上げに生きたのは、友人に鋸山で採取してもらったひと握りの土だ。この土を溶かしたニスで、壁面がギュッと締まった。

 

一気に生命が現れてきた感じだ。

 

ここ2か月ほど、ずっと頭の中でイメージし続け、試行錯誤の中で有機と無機のペイントを繰り返した。

 

元々貼ってあったきっと20年以上前の壁紙の浮き出た模様も合わせ、4層の平面が重なり合っていたものをランダムに剝がし、薄い白を塗装屋さんに塗っていただいた。

 

そこからぼくのペイントや左官を始めて、合計十数層の重なりが複雑な表面を構成している。

 

最後は、塗るたびに深みを増していく平面を、有機で終えるか、無機で終えるか、の決断を迫られた。

 

ずっと無機(モダン)の一様な薄い平面で終えることを予想していたが、予想に反して、有機(描画)で終えることになった。

 

それが冒頭の鋸山の土による描画だ。

 

鋸山という固有名の力が、壁面だけでなく、空間全体に生命を与えている。