自分がまだ生まれていない頃を回想するなんて変な話だけれど、その頃ぼくは母親のお腹の中に確かに存在していたのだから、なにも感じていなかったわけではないはずだ。
10月開催の東京オリンピックへ向けて、日本中が湧いていたかもしれない。きっと暑い夏だったのだろう、となんとなく想像している。
そのイメージはモノクロだ。ぼくの想像力は、その時代の写真に暗黙のうちに規定されている。
夏が暑くても、ぼくは母のお腹の中で涼しげに泳いでいただろう。母がうちわでゆっくりと扇いでいるのを感じる。
きっと外は暑いのだろうね。