gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

レオ

熊本県八代市

久しぶりにこの土地を訪れた。

30年前に、ぼくの両親が住んでいた土地。

レオという名前の白い犬を飼っていた土地。



ぼくが帰省すると彼は喜んで跳びついてきた。

いや、見知らぬ人が来ても彼は必ず喜んで跳びついてきた。

番犬としては全く向かない犬だった。



彼が歓迎したのは人だけではない。

彼が餌を食べているとき、すずめが近くへ飛んで来ると、彼は静かに犬小屋に入って、すずめが自分の餌を食べる姿を微笑むような目で眺めていた。



レオは散歩に連れて行くと、自由に走ることを好んだ。

紐を放してやると、ぼくより先を走って、振り返ってはぼくが来るのを待った。

そんなときも彼の顔は微笑んでいるように見えた。

ぼくが追いつこうとすると、また先へ走っていった。

いつか事故に遭うんじゃないかと気が気でないぼくは、その後、ひどく彼を叩いた。



レオは2歳半で病気で亡くなった。

話すことができない動物は、実はぼくよりもずっと崇高な精神を持っているんじゃないか、と思うことがある。

それはぼくがレオを思い出すからだ、と思う。

それを苦い後悔の念とともに思う。


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